贄の街 10

 深紅の和服がより淫靡であった。これから行われるであろう淫らな行為の象徴のような赤だ。

 瑞恵は拘束台に視線を向けない。向けないが、この台に縛られて辱めを受ける自分の姿が、想像できないはずがない。

 ドアが開くと、瑞恵はビクッと身を震わせた。怯えから安堵の表情に変わったのが分かった。

 入ってきたのは小松田だった。

 驚くことに、瑞恵は小松田を見て安堵したのだ。

 どれほど抱かれれば、この男を見て安堵の表情を浮かべられるのだろう。瑞恵と体の関係があるという事実がここにある。

 小松田はスーツ姿であった。赤色の派手なネクタイは和服の色に合わせたのだろうか。小松田が一瞥を投げると、瑞恵はすがるような表情を見せた。

「うん、今日も美しい」

 瑞恵を褒めて、パンパンと手を叩いた。すると、ドアから三人の小柄な男たちが入ってきた。瑞恵の小さな悲鳴が聞こえた。全員が全裸であり、股間にそそり立っているペニスを隠そうともしない。あまりの異様さに池村は肝を冷やす。

 三人とも小松田と似た背丈の男たちである。小松田と同じように体毛がなく、陰毛もない。全身がつるんとしているのもそっくりだ。小松田は髪があるが、彼らはスキンヘッドである。眉を剃っているのだろうか、そのせいで三人とも同じような顔に見える。ペニスの形状すら酷似している。サイズは小松田よりも小ぶりのような気もするが、一般男性程度の大きさはある。立派な部類だ。

 歩くたびに揺れるペニスが滑稽だが、男たちは気にもしていない。それよりも、目の前の獲物に興奮を抑えられない様子だ。

 さらに、彼らが手にしている道具を見て、池村の心臓が大きく脈打った。一人はバケツを二つ、もう一人は透明な液体が入っている大きなボトルと大量のタオル、三人目は巨大な注射器とビニールシートを抱えている。変態的行為が行なわれることは明らかだ。

「本日から、彼らは最上級の人妻の果肉を味わえることになりました。体内射精の許可も与えたところ、朝からおっ立てているしまつです」

 男たちの感極まったようなため息が聞こえた。股間のペニスがひくついて、先端から透明な液体が滴り、糸を引いた。

「あの人たちはいや」

 小松田にすがるような視線を向ける。

「どうしてですか」

「だって、小松田さんだけにしか、いやなんです」

 消え入りそうな瑞恵の声。

「僕のチンポを使ってグポグポするけれど、彼らのチンポでグポグポしたくない?」

「そ、そうです。ですから、あの人たちを部屋から出してッ。小松田さんに何をされてもいいから」

 瑞恵は耳たぶを真っ赤にする。

「光栄です。でも困りましたね。もうザーメンが残っていないのです」

 胸に右手を当ててお辞儀をする。

「近頃、とても可愛い人妻を入手しまして、今日は彼女の肉壺に出し尽くしてしまいました。ヌカロクのあとも、ずっと入れてて。朝から、つい先ほどまで。ご主人が帰ってきてしまいますから、こんな時間まで拘束するのは滅多にないのですが。彼女とのベーゼがよすぎて、つい……」

 思い出すように天井に目を向け、舌なめずりをして、瑞恵に向かって頭を下げた。

「彼女も一刻も早く、ご主人以外のチンポなしではいられないマン壺に、仕上げなければなりません」

 小松田はあごをしゃくった。

「やめてッ」

 瑞恵は両手で体を抱いて、身をよじるように首を振る。

 男たちは嬉々とした表情でいっせいに動いた。動作は機敏だった。拘束台を囲うように床にビニールシートを広げていく。そこまで飛ぶのかというくらい、彼らの意気込みの度合いを示すがごとく。遠くの方までシーツを敷き詰めていく。

 バケツに液体をドボドボと注ぎ入れている。もう一つのバケツは拘束台の下に置いた。その場所は、おそらく、開いた脚の下だ。バケツで調合した液体を注射器――浣腸器に吸い取っている。男らは手際がいい。

「彼らは自分たちの手で、奥様のおなかの内容物を強制的に吐き出させたい、と前から申しておりましたので、このたび許可したのです」

 追い打ちをかける小松田。

「僕はそういった趣味は持ち合わせていないので、こちらで見学しています」

 小松田は部屋の端の方に置いてある倚子に座った。瑞恵は両手で顔を覆う。

「僕と奥様のファックの際、今までは彼らに補助的な仕事をさせていましたが、ダッチドール計画の主導権を与えました。今まで奥様の担当は僕だけでしたが、これからは彼らの主導で調教が行われます」

「いや、そんなのいやですッ」

「本日からザーメンの量を増やしていきます。当分は彼らのザーメンですが、おいおい人数を増やしていくつもりです。奥様を真のダッチドールにするためには、肉壺に大量のザーメンを注入することが必要不可欠です。僕の射精だけで性的悦びを得るのですなく、どんな男性の射精でも真の悦びを得て欲しいのです」

「む、無理です、そんなの」

 瑞恵の周りでは、男たちがいそいそと動きまわっている。

「そのためには様々な種類のザーメンが必要なのです、射精回数を大幅に増やして訓練しなければなりません。僕一人では限界がありますから」

 男たちはバケツを前後左右に移動させ、その置き場所に神経を使っている。浣腸器に吸った液体の量を確認し、タオルの枚数を数える。ティシューボックスも配置した。

「ダッチドール計画、すなわち、奥様を購入したお客様に、心からの悦びをお示しできるように調教することです」

 要は瑞恵を売春婦に仕立てようとしているのだ。今までだって似たようなものだろうが、まるで家畜を扱うような態度である。こんな男に抱かれることに、本当に悦びを感じているのだろうか。

 朝からさっきまで抱かれた、その人妻も哀れである。夫が会社に行ったあと、呼びつけたのだ。もしかしたら自宅まで押しかけたのだろうか。

 もし妻の杏子がターゲットにされたら……。

 ふと、脳裏に浮かび悪寒が走った。こんなことをしている自分に嫌悪した。頭を抱えようとしたとき、小松田が小さくうなずいたのを見た。

 ――始まる。

 一瞬で池村を虜にした瑞恵のショーが、たった今始まる。倚子から浮いた腰が、元に戻る。やましさに苛まれながらも、視線は釘付けだった。

 スキンヘッドの男たちは、嬉々とした顔で瑞恵にまとわりつく。

 瑞恵が這いずるベッドの上に、一斉に飛び乗り、勃起したペニスを揺らしながら、瑞恵の自由を奪っていく。

「いやッ、止めてッ」

 着物をまくり、薄紅色の長襦袢もろとも引き上げて、白い肌襦袢を引き裂くように広げた。ふっくらした官能的な白い脚が露わになると男たちは目を輝かせた。瑞枝は身を揺すって抵抗するけれど、三人の男にかなうわけがない。

 一人は両手の自由を奪い、残りの二人があらわになったムチムチの太ももを、それぞれ抱きかかえた。瑞恵は悲痛な声をあげて助けを呼ぶが、小松田は口元に笑みを浮かべているだけである。

 小松田ほどではないが、どの男もたくましい体躯をしている。三人がかりだが、一人でも瑞恵の動きを封じることができるに違いない。

 帯が解かれ、深紅の着物も脱がされた。白の肌襦袢から水色のブラジャーが透けて見える。太ももの奥には白いものがチラッと見えた。湯文字(ゆもじ)の下のパンティがエロチックであった。

continue

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