贄の街 8

 吉田部長に朝一番で声をかけられた。最近なぜかすこぶる機嫌がいい。

「今井専務がお呼びだ」

 先月、今井は専務になったのだ。いずれはトップに、という噂も耳にする。もっとも池村にとっては雲の上の話であるため、何の実感もないが。

「何の用でしょう」と思わず聞き返すと、「いけばわかる」と笑いを含んだ顔を向けた。「私もいっしょにいこう」という吉田に従った。

 間近にいて児島にあった憂いのようなものは感じない。池村が入社した当初から情緒等に変化もない。児島には”彼ら”から連絡があったが、吉田にはないのではと思っている。その違いは何だろう。

 ショーにでていたのが見ず知らずの女性であれば、これほどのショックはない。小松田の腕の中で乱れる静代の狂態が瞼に浮かぶ。

 誘ってくれた児島に会って礼をいうのが筋だろうが、バーに足が向かない。こちらから電話をすればよいのだが、何といったらよいものか、思いあぐね現在に至っている。瑞枝に並々ならぬ関心を抱いたことを、察知されたのも決まりが悪い。

「何か悩み事でもあるのか。私でよければ聞いてやるぞ。奥さんと離ればなれで寂しいのか」

 エレベーターに乗り込むと同時に吉田に肩を叩かれた。「そんなことはありません」と慌てて手を振る。

 吉田の妻が小松田という不気味な男に、田楽刺しにされて喜悦の声をあげていた姿が、寝ても覚めても脳裏から消えない。そんな悩みを吉田に伝えられるはずもない。

 池村の脳は回顧する。

 脂っこいディープキスから解放された静代の顎は、唾液に濡れて光っている。大量の唾液が生みだされ交換された。静代はシーツに片手を突き唇をぬぐい、気怠げに長い髪を掻き上げた。

 キスをしながら泣いたせいで目が赤い。口を吸われ、乳房を弄くられながら、オーガズムとも感じられるわななきを池村は見た。

 小松田はベッドから飛び降りた。体型に不釣り合いな、完全体となったペニスが、ぶるるんと揺れる。

「奥様のお口の中の構造がよくわかりました。口内の分泌液も、お口のにおいも、もっと味わいたいのですが、奥様の肉壺の構造も知りたいので、チンポを突っ込みましょう」

 悪意まるだしで肉壺などと愚弄する小松田は、てきぱきと静代を『く』の字に折り曲げた。ぱんと尻をたたき、突きだすように指示すると怖々従った。両手で片尻を押し上げて覗き込み「うん」と独りごちる。

 亀頭が触れるとびくっと躰を震わせた。最後の砦であろう唇を守ることができなかったせいか、まな板の鯉のごとく身を委ねている。

「たっぷり貯まったザーメンを吐き出したら、より情熱的なベーゼをしましょう」

 小松田は亀頭をくぐらせていった。みぞおちを棒で突かれたような静代。先っぽだけを含ませるとすっと腰を引き、また亀頭をずぶりと膣に戻す。こんな抜き差しを繰り返すと静代は「ふぅん、ぅふぅん」と深い息を吐き臀部を揺らした。

「奥様の肉壺に納めてしまえば、射精するまでもう萎えることはありません」

 膣内射精を宣言しながら小松田は、機械的に腰を前後させた。水気の多いぐずぐず音をたてながら。

「あッ、あッ、嘘、嘘よッ、こんなの、いやぁッ」

 腰が密着すると「ああッ、来るぅッ」と疾呼し、首を反らせた。小松田の腰がベリーダンスのように円を描く。腹を引きつらせる静代の気持ちなど頓着しない。

「ああ、奥様の肉壺はアナル棒の使いすぎですね。今は僕の射精棒のディルドよりアナル棒のほうがいいのでしょう。肉壺がそういっています。少々ユルユルがまた良いのですが」しかし表情は自信に満ちている。

「い、いわないでッ、ねえ、いわないでッ」

 静代は切羽詰まったような声で叫んだ。アナル棒なるものが膣で慣れていることが困るのか、それによって、ユルユルなのが困ることなのか、池村には分からなかった。

 熟女らしく若干の脂肪を蓄えたウエストに両手を置いて、亀頭まで引き抜いてから一息に付け根まで埋め込んだ。

「ひぃッ」静代は歯を剥いて呻吟する。

 腰を前後させるたびに、小松田の発達した尻の筋肉が、きゅっと引き締まる。結合部に視線を落としながら反復運動を行なった。

 貫いたまま器用にベッドに這い上がっていった。静代の下半身にへばりつき、抱えるようにして中央まで移動する。

 小さな子供が母親にオンブをねだっているようだ。子供の立派なペニスが母親の膣を深々と貫きながら。池村は奇妙な錯覚に陥った。異様な光景に薄ら寒さを感じた。

 静代の膝を折り曲げて、体位を後背位に変えていった。性器の位置を合わせるため、静代の体勢を低くする必要がある。

 モニターに結合部が映る。上からの映像だ。両手の指を静代の肌に食い込ませ、ペニスが外に飛びでるほどの抜き差しを律動的に行っている。粘膜を捲り返されるわずか上の菊門は、巨大なディルドを呑み込んだとは思えないほど、ぴっちり閉じていた。

「グチャグチャにした寒天の中に、チンポを入れているような。でも肉壺のヒダヒダがちゃんとチンポに絡みついてきます。彼らのいったとおり」

 そこをつなげたまま横臥させ後背位を崩す。両手で片脚を抱えて股を開き、腰を揺すって割り込ませる。松葉崩しの体位に変化させた。ただちにピストン運動を開始する。休ませるつもりはないらしい。粘液質の音が部屋に響き渡った。両手で抱いている伸びやかな脚に口づけをする。

「ディルドよりもネバ汁の量が多いですね。嬉しい限りです。この肉壺は生用なのでしょう。アナル棒が好きな割りには、奥様の肉壺は僕の射精棒の形状をしっかり記憶しています」

 噎び泣くようなブルースを奏でる静代夫人に魅入られ、小松田が少しでも羨ましいと思ったことに、池村は罪悪感を感じていた。

 勃起も萎えも、思うままに操れる男だ。射精のタイミングも自在なのだろう。小松田は絶倫を発揮した。ホップダンスのように腰をひねりまわす。

「ああ、いい……いいッ」

 静代は快楽を訴えた。両手を羽のように広げ、シーツを握りしめている。「どこがいいのですか」菊門に指先を差し込んだ。

「そ、そこ、だめぇッ」

「また奥様の、ザーメン吸い取り用の肉壺が、きゅっと締まりました」

「いわないで、ください、ああッ、だめッ、か、下半身が」

「浣腸にも慣れたようですね。我々の目の前で、浣腸なしでウンチができるようになると、いいですね。もっとも僕はあまりそんな趣味はありませんが。僕は奥様にオルガスムスを与えたいのです」

 体勢を崩す静代の尻を平手で叩く。

「い、いじわるぅ、ひッ」

 突き込まれるたびに静代の髪が乱れる。小松田は変則的に腰を揺さぶった。淫らな水音が室内に響く。

「アナルで僕の指をしっかり握ってみなさい」

「いや、いやッ、あん、あぁん」

 甲高いよがり声に小松田は声をあげずに歯を見せた。汗ばむ肌が光っている。鍛えられた全身の筋肉が躍動する。悦楽に浸る静代の舌足らずの声に、池村の胸は押しつぶささそうだった。裏腹に視線は釘づけだった。丸窓に顔を押しあてるようにして魅入った。

「アアッ、おっきいッ、だ、だめッ、お、お尻……いいッ」

 静代は舌をもつれさせながらすすり泣き、むずかるように身もだえる。

「アッ、アッ……き、気持ちいいッ……アアッ、我慢できないッ……イクッ、イクゥッ」

 がくんがくんと全身を揺さぶった。小松田は二回ほど荒々しく抜き差しを繰り返し、静代のオーガズムに合わせるよう、ペニスを深々と差し込んだ。上半身をのけぞらせる静代の乳房を、インナーの上から握りしめ、腹筋と尻の筋肉を収縮させた。小松田のうなり声がかすかに聞こえた。

 ずれたビスチェブラジャーから覗く乳房には、指の形が赤く残っている。発作を終えた小松田は、落ち着いた様子でやおらペニスを抜く。

 荒らされた花びらは、海から上がったばかりのアワビのようだ。充血した果肉をのぞかせたラビアのまわりや陰毛に、長時間の摩擦で白く濁った体液が付着している。ぽっかり開いた膣口はあまりに卑猥だった。

 白い泡はペニスにも輪をつくってこびりついている。モニターを見ているだけで、におってきそうだ。静代の体臭を思ったが精液が注がれた膣は、あの芳香とは似ても似つかぬにおいだろう。

 ぬたつく花びらをぞんざいに指で広げた。たちまち溶岩の気泡のように、音を立てて膣口から精液が吹きだした。

 腹を強く押して絞りだす。続いて例の巨大なディルドを菊門にねじ込んだ。静代の生理的状況など無視して深々と入れたディルドを操り、間接的に直腸を扱いて奥に残っている精液を排泄させる蛮行さえ行なった。静代が避妊していることを願うしかない。

 小松田は落とした城の高貴な奥方や雅(みやび)な姫君を、勝利品として扱う部将のごとく静代を抱き寄せて、唇を吸い取った。ディープキスは静代のほうから、ねだっているようにも見えた。ふんふんと、鼻や口から息を吐き、小松田に口のにおいを嗅がせていた。

 吉田は妻が見知らぬ男に、淫らな調教を受けていることは知らない。したがって現場にはきていない。池村はそう結論づけた。マンションをでたあと、参加している人物を探ろうと思ったがやめた。そうしなかったのは問題が発生した場合、児島に迷惑をかけることになるからだ。

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